自給自足的な生活をしていると必ず火を使います。
冬場は暖をとるために毎日焚き火をしますし、調理にも火は欠かせません。
私の場合は竹林整備などをしていると大量の伐採した竹が出てくるので、燃やす材料は大量にあります。
竹は油分を含むので生の竹でもよく燃えるので、材料としては最適です。
燃やした後には「炭」ができ、さらに炭が燃えると最終的に「灰」になります。
炭はさらに燃えて燃料になりますが、灰は燃えカスとして何か用途があるのでしょうか。
じつは灰はとても貴重なもので、ここでは灰について書いてみたいと思います。
灰の性質
燃えた後に最終的にできるものが灰ですから、灰はこれ以上燃える事はなく、ほとんど熱を伝えません。
このような性質を持つ物質は貴重であり、灰は最高の断熱材なのです。
昔、囲炉裏があたりまえに家にあった時代は、灰で囲炉裏を満たして断熱材として使用していました。
灰の上で火を燃やしても灰から下に熱が伝わらず、火事になったりしないのです。
それも数センチの厚さの灰で十分断熱効果があるのです。
昔、私の家に火鉢があって、それが倉庫に眠っていたので使ってみようと中に入っていた灰を捨てて、直接火鉢に炭を入れて火を焚き始めたら陶器でできた火鉢が見事に割れてしまった経験があります。
当時何も知識がなかった私は、灰は炭を燃やして結果的にできた燃えカスというふうに考えていたので灰を全て捨ててしまったのですが、火鉢に灰が不可欠であることを身をもって知りました。
貴重な灰
たくさんの木や竹を燃やしても灰はほんの少ししかできません。
1トンの木を燃やしてたったの5kg程度の灰にしかならないため、1kg当たり数千円するような灰もあります。
燃やしたものによっても灰の性質が異なっており、特にクヌギの灰はきめが細かく最高級品です。
江戸時代の茶道家は、家が火事になったときに真っ先に持って逃げるものは、囲炉裏の灰だったそうです。
それほど貴重なものだったのです。
砂が混ざっていない高級なクヌギやナラの灰は、燃えている炭をその灰の中に入れても火が消えないそうです。
つまり、しっかり断熱効果はあって、空気は通してくれるというわけです。
昔は今のようにライターという便利なものがありませんでしたから、火おこし器や火打石で苦労して火を起こしていました。
いったん起こした火は一冬絶やすことがないよう灰を被せておいて翌日にも使えるようにしていたのです。
灰の用途
農業
そもそも灰は燃え残った鉱物(カリウム、カルシウム、マグネシウム、ケイ素、リン、鉄、ナトリウム、アルミニウム等々)の酸化物や炭酸塩、硫酸塩等の塊です。
自然農をしていると、まず土壌改良などに灰を使います。
灰を土壌にまくことで、酸性に傾いた痩せた土壌をアルカリ性にしてくれ、ミネラル分を供給してくれます。
これによりアルカリ性を好む有用菌が増え、微生物の働きが活発になります。
また、灰はその匂いで特定の病害虫を寄せ付けませんので農薬も必要ありません。
断熱材
灰は熱を通さないため最高の断熱材として囲炉裏や火鉢などに用いられるという用途があります。
数センチの厚みの灰で囲炉裏や火鉢の底が熱くなることはないほど断熱効果に優れています。
調理
灰はアク抜きに使えます。
山で採ってきた山菜やタケノコのアク抜きなどに私は使っています。
さいごに
花咲かじいさんのお話では、枯れ木に灰をまくと花が咲くというような内容がありますが、昔の人は灰をそのようなものとして見ていたのでしょう。
不死鳥フェニックスは自ら香木を積み重ねて火をつけて焼死し、その灰の中から蘇るなどという逸話にもあるように、灰は死から生への象徴のように見受けられます。
燃え残った最後のカスを灰として、「灰=死」を連想してしまいますが、むしろ全く逆で灰は死から生へ導く用途の広い物質なのです。
そのように灰をとらえると、灰が神秘的なモノに見えてきます。
実際、これ以上燃えない、熱も伝えないという性質は神的だと思います。
自然農に、灰は不可欠です。
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