実家が農家なので小さい頃から土に触れて生きてきました。
30歳頃から少し本気で、自分の食べる物は自分で作ろうと考えるようになりました。
食に対する漠然とした不安(中国産食品、農薬、化学肥料、遺伝子組み換え・・・)もあったんですが、何よりも自分で食べる物を自分で作っていない状態が、とても不安定な生き方に思えたから。
ここでは農業を志す人に向けて、日本で行われている3種類の農法(慣行農法、有機農法、自然農)について、その違いなどを説明します。
慣行農法について
慣行農法は現在日本で一般に広く普及している農薬や化学肥料を使った農法のことです。
2014年時点で日本では、慣行農法を行う農地は全体の99%以上を占めています。
EU諸国では日本よりも有機農法の割合が高く慣行農法は少ないのですが、それでも9割以上は慣行農法です。
以前、何かの番組で、若い女性が農業をやっている特集があって、女性が颯爽とトラクターを運転したりラジコンヘリを操って農薬を散布したりする様子がドキュメンタリー調で報道されていました。
リポーターに「農業楽しいですか?」と聞かれたその女性は、
「楽しくない、野菜がお金にしか見えない。」と答えていて衝撃的でした。
でも、よく考えてみればそうだろうと思います。
農薬や化学肥料を使って自然の摂理に逆らって農業をやっても楽しくないのでしょう。
大型機械を乗り回しても、排気ガスや騒音でせっかくの自然の中にいる環境が台無しです。
まさにこれが慣行農法というものです。
有機農法と自然農の違い
有機農法と自然農は混同されがちですが、全く違います。
有機農法は 「有機農業の推進に関する法律」 に定義されています。
基本的には農薬や化学肥料を使わず、遺伝子組換え技術も使わず、有機肥料などの有機資材を用いた農法が有機農法です。
有機農法を用いている農家は「有機JAS認証」を取得することができます。
有機JAS制度
JAS法に基づき「有機JAS規格」に適合した生産が行われていることを第三者機関が検査し、認証された事業者に「有機JASマーク」の使用を認める制度
(農林水産省)
「有機JAS認証」は、禁止されている農薬を2年以上使用していない等、一定の基準を満たした栽培方法が取られていると認定機関に認められた場合に、有機JASマークを使用して販売することができます。
「有機」や「オーガニック」として販売する農作物は、この有機JAS認証を取得している必要があります。
しかしこの有機JAS認証はクセモノで、有機とはいいながら一部の農薬の使用が認められていますし、有機JAS認証を取得するための認証手数料や毎年の費用がかかるので、販売価格に上乗せされるために高価になります。
有機農法といえば本来は自然農の意味なんですが、現在の日本で行われている有機農法は「有機JAS認証」の取得条件を満たした農法のことで、有機肥料農法とでも呼ぶべきものです。
一方で、自然農は岡田茂吉さん(無農薬・無肥料)や福岡正信さん(不耕起・無農薬・無肥料・無除草) が提唱されましたが、自然農にも種類があって、全く耕さない不耕起で行われるやり方もあります。
ただ、基本的には無農薬、無肥料で栽培されることは共通ですし、このやり方が、人類が1万年以上前から取り組んできた農業であり、本来の農業の形です。
だから、自然農法とは呼ばずに自然農と呼ぶ人が多いのです。
無農薬、低農薬、減農薬、省農薬について
栽培中に農薬を使用しない「無農薬」というのは、現在では販売する農作物に表記できません。
それは残留農薬が全くないというような誤解を与えやすいため、2003年に禁止されたからです。
有機JAS認証を取得している農作物は、指定された農薬が2年以上使用されていない土壌で栽培されていて、栽培中も指定された農薬が使用されていないことが保証されていますが、それでも「無農薬」という表記はできません。
一時期は「減農薬」「低農薬」「省農薬」などの表記もありましたが、例えば「減農薬」といっても元々大量の農薬を使用していたところから「減」であったり、基準がないため、なにより消費者に分かりにくいので使用できなくなりました。
今では、「有機JAS」にほぼ一本化されています。
つまり有機JAS認証を取得した事業者が「有機」や「オーガニック」といった表記ができ、それ以外の「有機無農薬」「減農薬」などの表記はできなくなっています。
さいごに
私の農業は農薬や化学肥料などはもちろん使用しませんが、一般に使用される農業用機械(耕運機、トラクター、コンバイン)も使わないし、ビニールマルチ等の石油化学製品も使用しません。
土を汚すから。
だから作るモノも自然農で栽培しやすい農作物を選んでいます。
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