はじめに
自給自足を成し遂げるためには、お金をかけずに食材を確保したいものです。
そのような意味で山菜や野草は、安心安全で無料で手に入るありがたい食材です。
無農薬の野菜をわざわざ育てなくても、食べられる山菜が山にはたくさん自生しています。
しかもお金を出して買う野菜より栄養価ははるかに高いのです。
自然栽培の野菜がタダで手に入るようなものだね。
自給自足に必須の山菜の活用方法をご紹介します。
山菜の栄養
無農薬ゆえの豊富な栄養
山菜の良さはなんといっても完全自然栽培で野生でたくましく育っているため、ビタミンやミネラルなどの栄養素が豊富なことです。
過剰な肥料や農薬で育てられたメタボリックで栄養が貧弱な野菜とは比べ物になりません。
安全性でも栄養の点でも人工的に栽培された野菜よりも山菜をオススメします。
1.タンパク質
2.炭水化物
3.脂質
4.ビタミン
5.ミネラル
6.食物繊維
7.フィトケミカル
8.水
9.酵素
(赤線は春の山菜に豊富な栄養素)
9大栄養素は重要な順番に並んでいるのではありません。
現代人は3大栄養素と呼ばれる「1.タンパク質」、「2.炭水化物」、「3.脂質」は過剰気味なので少ない方がよいのです。
現代人に不足しがちな「4.ビタミン」や「5.ミネラル」、「6.食物繊維」、「7.フィトケミカル」などが重要となってきます。
山菜はこれら現代人に不足しがちな栄養素を豊富に含んでいます。
食物繊維
葉物山菜やタケノコには食物繊維がたくさん含まれています。
食物繊維は以下の2点で重要な栄養素です。
・腸内細菌の餌になる
・腸に溜まった便を洗い流す
人間の体内で消化できない食物繊維はもともと栄養素と認められておらず、5大栄養素の時代が続いていました。
しかし近年、腸内細菌の餌になるという点で非常に重要な栄養素であることがわかり、6番目の栄養素として認定されました。
さらに食物繊維は便通を良くしてくれるので、デトックス効果が高いのです。
フィトケミカル
植物はそもそも動物のように移動できないので太陽からの紫外線や害虫などから身を守る物質を体内で生み出す必要がありました。
この物質はフィトケミカルと呼ばれ、人間に必要な9大栄養素の7番目の栄養素です。
「フィト(phito)=植物の」、「ケミカル(chemical)=化学物質」で「植物性化学物質」という意味です。
フィトンチッド(phytoncide)って知ってますか?
これは植物が傷つけられた時に出す匂いの成分です。
これも「フィト(phito)=植物の」、「チッド(cide)=殺す」の意味の造語です。
人間が育てた野菜は食べやすいのですが、山菜は自然の中で強く育ってきたので独特の苦みやアクがあり、このアクや苦み成分がフィトケミカルの正体です。
・抗酸化作用
・デトックス作用
フィトケミカルの一種であるポリフェノールは赤ワインなどに含まれていて、抗酸化作用で良く知られていますね。
その他、トマトのリコピン、ゴマのセサミン、大豆のイソフラボンなどフィトケミカルには様々な種類があります。
植物は太陽の紫外線などから自分を守るためにこのような抗酸化成分を体内に蓄えているのです。
さらに、フィトケミカルには大きなデトックス作用があります。
フキノトウ、タラの芽、菜花など、春はこのような山菜の苦みが美味しく感じませんか?
それは冬に溜まった毒素をデトックスするための成分として働いてくれるので、体が欲している証拠です。
山菜と野草の総合ランキング
1位:ミツバ
入手しやすさ:★★★★★
美味しさ :★★★★☆
調理しやすさ:★★★★★
・真冬以外の長期間食べられる
・香りが最高
・アク抜きが不要で調理が楽
・繁殖力が高くたくさん取れる
春の山菜は苦みがあるものがおいしいですが、ミツバは苦みがなく独特の香りがあってとてもおいしいです。
春の匂いって感じだね。
お店で売ってるミツバはおいしくないよー。
野生に自生しているミツバがいかに香りが強く美味しいか、ぜひ味わってみてください。
冬以外は年中食べられて調理が簡単というとても扱いやすい山菜です。
アク抜きの必要ない山菜は少ないので貴重です。
私は山からミツバを根ごと持って帰って庭に植えたら、庭中ミツバだらけになりました。
僕はミツバのクローバーのことを「ミツバ」と呼んでいたので、それのことだと勘違いしてた・・・
2位:タラの芽
入手しやすさ:★★★☆☆
美味しさ :★★★★★
調理しやすさ:★★★★☆
タラの芽は「山菜の王様」と呼ばれており、野山に自生しています。下の写真はタラの芽の収穫の様子です。
・とにかく美味しい
・繁殖力が高くたくさん採れる
自然に自生している天然のタラの芽は本当に美味しく、苦みが最高です。
天ぷらにすると最高においしいですし、風味をしっかり味わいたいなら蒸して食べるのをオススメします。
3月末ごろから芽を出し、4月上旬に早めに収穫するとアクが少ないので少し蒸しただけでも食べられます。
下の写真は一番芽を収穫した後に新しく生えてきた芽です。一番芽が柔らかくて一番おいしく、二番芽は硬めです。
3位:タケノコ
入手しやすさ:★★★☆☆
美味しさ :★★★★★
調理しやすさ:★★★★☆
タケノコも山菜の仲間です。
食物繊維が豊富な春の山菜です。
1年の間で3月下旬~5月上旬の期間しか収穫できないので、この期間を逃さずぜひ毎年食べてください。近年はイノシシ被害により全国的にタケノコの収穫量が減っています。
特に3月に収穫されたタケノコは最高に美味しいです。
タケノコは山に入って収穫すると泥棒になりますので買うことになるかと思いますが、ほとんど無農薬なので安心して食べられると思います。
ただし肥料を過剰にやっているものもあるので、できれば信頼できるタケノコ農家から購入すると安心です。
4位:山椒 (サンショウ)
入手しやすさ:★★★☆☆
美味しさ :★★★★☆
調理しやすさ:★★★★☆
野生の山椒の香りを嗅いだことありますか?
驚きの香りで、なんともいえない幸福感に包まれます。
びっくりしますよ。
山椒は冬に枯れたように枝だけになりますが、春になるとちゃんと芽がでてきます。
5位:ウド
入手しやすさ:★★☆☆☆
美味しさ :★★★★☆
調理しやすさ:★★★★☆
初春に食べられる春の始まりを感じさせてくれる山菜です。
春に出る若芽を食べます。アクが強いのでアク抜き必要ですが天ぷらや茹でる場合は不要です。
成長したウドはほとんどアクがないので生でも食べられます。
皮をむいて、水で晒して短冊に切って、味噌や酢の物で。
収穫して酢味噌和えにしてみると最高でした。
4位の山椒は同じ時期に収穫できるので、ウドの酢味噌和えに山椒の葉を乗せるとさらに美味しくなります。
6位:コゴミ
入手しやすさ:★★★☆☆
美味しさ :★★★☆☆
調理しやすさ:★★★★☆
ゼンマイとワラビとコゴミは区別がつきにくいですが、コゴミはこのなかで唯一、アク抜きが必要なく食べやすいです。
明るい緑色なのでワラビやゼンマイとは区別しやすいかもしれません。
7位:ヨモギ
入手しやすさ:★★★★★
美味しさ :★★☆☆☆
調理しやすさ:★★★☆☆
3月上旬ごろから生え始めてどこでも見られます。
群生して自生しているのをよく見ますね。
6月以降だと硬くてなかなか食べにくいですが、先端の柔らかい部分なら食べられます。
私はそのまま味噌汁に入れるか、ヨモギ餅にして食べます。
お灸に使われるモグサの原料もヨモギですね。
いろいろ使えます。
8位:ムカゴ、自然薯
入手しやすさ:★★☆☆☆
美味しさ :★★★★★
調理しやすさ:★★★★☆
見つけにくいのが難点ですが、ムカゴを見つけたら根本を掘れば自然薯が出てきます。
天然の自然薯は高級品です。
ムカゴごはんはおいしいね。
9位:つくし
入手しやすさ:★★★☆☆
美味しさ :★★★★☆
調理しやすさ:★★☆☆☆
袴をとってしっかりアク抜きする必要があるので調理は面倒ですが、卵と一緒に似てごはんにかけて食べると最高ですね。
10位:イタドリ
入手しやすさ:★★★★★
美味しさ :★★☆☆☆
調理しやすさ:★★☆☆☆
上の写真は4月頃の様子。
下の写真は5月末の成長した様子。かなり大きく太くなります。
茎はポキっと折れて中が空洞になっています。
私は子供の頃、親が「すかんぽ(酸模)」と呼んでいたので今でもそう呼んでいますが、地域によって「いたんぽ」「すっぽん」などなど様々な呼ばれ方がされているようです。
「すかんぽ」はスイバのことを指す地域もあるようです。
私は子供の頃、よく生で食べてました。
すっぱかったー。だからすかんぽって呼ぶのかな。
子どもの頃の思い出も加味して10位にランクインです。
入手難度は低いですがシュウ酸が含まれているのでアク抜きが必要です。
シュウ酸はホウレンソウにも含まれている成分です。
予想外に食べられる野草たち
どこにでも生えていて入手は容易ですが、山奥ではなく田畑や人間の生活環境に近い場所に自生していることが多く、農薬や除草剤に注意が必要な野草たちを紹介します。
スベリヒユ
雑草として邪魔物扱いされるスベリヒユですが、食べられます。蒸して叩くとぬめりがでておいしいです。干せば保存食にもなって目からウロコの食材です。
こんな雑草がたべられるなんてー!!!
タンポポ
外来種の西洋タンポポが多く、一年中見られます。
花も葉も根も食べられるのが良いところですが、葉を食べるなら春から夏のものが良いです。
花を食べるなら開花直前くらいのものを食べます。
根を食べるなら秋に収穫し、きんぴらやお茶にします。
根は漢方で用いられているほど薬効があります。
カラスノエンドウ
若芽も鞘も豆も食べられますが、豆ごはんにしてもあまりおいしくありません。
グリーンピースのような良い香りはありませんでした。
天ぷらや炒め物なら生のままでも可です。
ピーピーマメってゆうんだよー、豆をピーピーならして遊ぶんだー。
オオバコ
人が歩く畦道などに自生しています。
踏みつけられるのが好きなのでしょうか。
灰汁が少ないのでサラダでも食べられますが、味は青臭くて苦みがあり美味しくないです。
年中とれるので食糧難になったらオオバコが食べられるという知識が貴重かもしれません。
ドクダミ
私は春~梅雨の時期に収穫して天日乾燥させ、ドクダミ茶として飲んでいます。
上の写真は5月末頃に花を咲かせた様子です。
独特の味で嫌いな人が多いですが、私は好きで、タジン鍋で蒸して食べると嫌な匂いが消えておいしいです。
ドクダミというだけあってデトックス作用抜群です。
スイバ
どこにでも生えていて入手何度は低いです。スイバはギシギシという野草と似ていて、成長した姿は素人では区別がつきません。どちらも食べられます。
下の写真はスイバかギシギシかわかりません。スイバもギシギシも多くの種類があり、 スイバ ヒメスイバ ナガバギシギシ アレチギシギシ ・・・などなど、それぞれとても良く似ています。
ノゲシ
麻薬で有名なケシの葉に似ていることからノゲシと名付けられたそうです。
アクをしっかりとって味噌汁にでも。根は漢方に用いられているほど薬効があります。
クレソン(オランダ辛子)
水中や湿地に生えています。私はクレソンの辛味が好きです。
レストランでステーキの付け合わせにでてきたよー。
スギナ
痩せた土の畑に良く生えています。
痩せた土を肥えさせるために自然に生えてくるのです。
カルシウムなどの栄養が豊富で、茹でてすりつぶしてパン生地などに混ぜたり、乾燥させてお茶にしたりすれば栄養満点の食事ができあがります。
栄養価は高いですがおいしいとは言えません。
ノビル
ネギの仲間で球根がついています。
土手などに自生しています。
生でも食べられますが酢味噌和えがおいしいです。
オオイヌノフグリ
青い花が食べられるそうですが私は食べたことがありません。
ヒメジオン、ハルジオン
ヒメジオンとハルジオンはとても似ていて、私は区別がつきません。上の写真はどちらなんでしょう。基本的に全部食べられます。
ヒメオドリコソウ
ヒメオドリコソウはホトケノザ(下)と見た目が似ていてよく間違われます。
アク抜きなしで食べられる野草
山菜は調理のしやすさが重要かと思います。
アク抜きが必要ない山菜は少し蒸すだけでほとんど生で食べられて、しっかりと香りを味わえるので最高ですね。
・ミツバ 総合ランキング1位
・タラの芽 総合ランキング2位
・山椒 総合ランキング5位
・ツクシ 総合ランキング7位
コシアブラ
「山菜の女王」とも呼ばれています。「山菜の王様」と呼ばれるタラの芽と同じウコギ科です。
コシアブラの名前の由来は、昔この木の樹脂を漆(うるし)のように塗料として使用していたことによるそうです。
アザミ
ピンク色の花、茎や根も含めて全て食べられます。
チクチクする上部の葉ではなく丸くて柔らかい葉と新芽を食べます。
ゴボウのような根も食べられて味噌漬けやきんぴらにするとおいしいです。
ツユクサ
7月、青い花が咲いている時が積み時です。
ノカンゾウ
柿色(オレンジ色)のユリのような花で、春は茎を6~7月はつぼみを食べます。
若葉を茹でる、つぼみは天ぷらや酢の物、干すと保存食にもなります。
クズ
見た目に食べられそうにありませんが、ツルの先端の柔らかい若葉、秋に咲く花も食べられます。
根は葛根湯やクズ粉の原料になりますが、根をとるのはとても重労働です。以前自宅でウサギを飼っていた時、餌にクズの葉を与えていました。
とてもおいしそうによく食べました。
クワの葉
昔はクワの木といえば養蚕で、カイコの餌としてクワの葉を使っていましたが、自生していることが多く、人間も食べられます。
5月頃に新しい葉が生えてきますので、収穫して蒸して食べると粘りが出て美味しいです。
6月頃からはクワの実(マルベリー)が取れます。
タデ
「タデ食う虫もすきずき」のタデです。
食用に利用されるものはほとんどがヤナギタデで、水辺や湿地で見られます。
刺激的な辛味と特有の香りがあります。
ユリ根
ユリ根は京都の高級料亭で食べると驚くほどの値段がしますが、栽培に年月がかかるため手に入りにくく高級食材です。
なのに道端に自生していたりしますので、上の写真のようなユリ根を見つけて掘り返せば、ユリ根が食べられます。
6月頃から写真のような花を咲かせて秋ごろに収穫期を迎えます。
春の七草
人日の節句(1月7日)の朝に、春の七草と呼ばれる7種の野菜が入った「七草粥」を食べると邪気を払い万病を除くと古くから言い伝えられてきた風習があります。
つまり1月にはもう取れる野草(野菜)なんですね。
春の七草の中には栽培が必要な野菜もありますが、山菜もいくつかありますので紹介します。
ナズナ
ぺんぺん草などと呼ばれますが、冬から春に向かう最も早い時期から食べられるので食材の少ない冬に重宝します。
ハコベ(はこべら)
3月頃から生えてきます。
私は蒸してたくさん食べすぎて気持ち悪くなりました。
調理する時はしっかりとしたアク抜きが必要かと思われます。
ホトケノザ
黄色い花を咲かせる野草が、春の七草のホトケノザです。
現在一般にホトケノザと呼ばれている紫の花を咲かせる野草(下)とは異なります。
ハハコグサ(ゴギョウ)
黄色いつぶつぶの花を咲かせます。
茎や葉の若芽が食べられ、アクが強いので茹でて水にさらします。
セリ
毒セリと見分けがつきにくいので要注意です。
すずしろ(大根)
ダイコンのことを昔はすずしろと呼びました。
ダイコンは育てやすいですが、肥料が多すぎると大きいダイコンになり発ガン性のある硝酸体窒素が過剰になりますので注意が必要です。
すずな(カブ)
カブのことを昔は「すずな」と呼びました。
山菜というか、野菜として育てるのが一般的ですね。
薬になる野草
・ハコベ(「春の七草」参照)
・ヨモギ(総合ランキング第7位)
・ドクダミ(「予想外に食べられる野草」参照)
・オオバコ(「予想外に食べられる野草」参照)
・ヘビイチゴ
ヘビイチゴの花は4月頃、下のように黄色い花を咲かせます。
その後、5月になったら小さなイチゴの実が成ります。
ヘビイチゴはなんとなく毒がありそうで食べられないものと思い込んでいましたが、食べられるそうです。ただ、味がなくまずい・・・
山菜取りの注意点
毒草
毒キノコの見分けはプロでも難しいようなのでキノコ狩りはオススメできませんが、山菜は「毒ゼリ」と「キツネノボタン」と「トリカブト」だけ覚えておけば一応問題ないかと思います。
毒ゼリもトリカブトも水辺とか湿ったところに生えているので、湿地帯に生えていたら注意してみてください。
日本三大有毒植物:「ドクゼリ」「ドクウツギ」「トリカブト」
除草剤
山菜を取る場所には要注意です。
畑の畔や土手は除草剤が撒かれている可能性が高く、山菜を取るのは山奥が理想的です。
案外、山奥よりも除草剤が撒かれやすい畑周辺などに生えている山菜が多く、つくし、タンポポ、オオイヌノフグリ、カラスノエンドウなどは注意してください。
野生動物(イノシシ、熊)
山菜取りに山奥に入ると、野生動物に遭遇することがあります。
リスやウサギならかわいくてホッコリするんですが、イノシシやクマとなると襲われると命に関わります。
私はクマに遭遇したことはありませんがイノシシは何度も見ていて、臆病な性格なので襲われる事は少ないですが死亡事故も発生しているようなので注意は必要です。
山菜の調理方法
アク抜きの必要な山菜
アク抜きの必要な山菜でも天ぷらにすればアク抜きは必要なく、手間いらずでおいしく食べられます。
山菜の風味、香り、苦味を味わいたければ、しっかりアクを取ってお浸しや和え物、味噌汁の具に。
アク抜きの必要ない山菜
タジン鍋ひとつあればとても便利で重宝します。アク取りの必要ないミツバ、タラの芽、3月収穫のタケノコなど、すべてタジン鍋に放り込んで数十分煮れば、あとは天然塩か梅干しを添えておいしく食べられます。
さいごに
山菜の活用はぜったいオススメです。
安心安全で栄養満点の野菜が無料で手に入りますよ。
次は、この記事で掲載しなかったベリー類について。
コメント